わたしは年下の幼馴染に振り回されています
 先ほどのように彼の指先が私の顎に触れ、肌を掠めていく。

先ほどとは違い、彼の指が熱を持ったように熱かった。

「昔から俺は美月のことになるとこうだからダメだね。だから相手にされないのに」

 困り、哀しそうな目をしている彼から目をそらすことができなくなっていた。

何かを言わないといけないと思っても、喉が干上がったように渇き、言葉が乾きに飲み込まれる。

 彼が愛でるように喉を撫で、その手の動きに反応するように喉がなっていた。その触れていた手が強引に私の顎を持ち上げる。

 そのとき、ドアがノックされる。拓馬の手がわたしから離れた。

 彼は先ほどの余韻さえ感じさせない顔で扉を開けた。

 部屋に来たのは母親で、どうやら飲み物を持ってきたらしい。

「飲み物だって」

 そういった拓馬の表情はそれは私の知る再会してからの拓馬だった。

 あのときの熱っぽい、それでいてどこか哀しそうな目が拓馬の本心なら、私は再会してから初めて彼の本心を見た気がした。
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