わたしは年下の幼馴染に振り回されています
「拓馬君があなたのことをどれほど好きなのは分かりました。だから、もう忘れようと決めたんです」

「忘れるの?」

「世の中には絶対に変えられないものがあるんですよ。そういうのを追い続けていても無意味なのは分かっています。人の気持ちは移ろうものですが、彼のあなたに対する気持ちは少々のことでは変わらない気がします」

「それでいいの?」

「別にいいんですよ。わたしは自分が惨めになるような恋愛はしない。あなた以外だったら諦めなかった。きっとあなたと拓馬君ならいい恋人同士になるでしょうね」

 彼女から告白されたわけではないのに、最初に見せられた悪意の影響からか、彼女の言葉がやけに恥ずかしかった。

彼女にわたしという存在を認められたような気がしたからだ。

 だが、恋人同士というのはちょっと困る。

「でも、わたしはまだ拓馬と付き合ってないよ」

「わたしは時間の問題だと思っていますよ。行きましょうか。あまり立ち止まっている時間はなさそうですから」

 目の前の信号は青に変わり、わたし達の周りにいた人は既に向こうの道路に渡っている。

人気のない道路を慌てて横断することにした。
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