わたしは年下の幼馴染に振り回されています
「どうかした?」

 彼はチケットの角を持ちひらつかせる。

「無駄にするのも悪いし、よかったら一緒に行かない? 来年の春までだから受験終わってからでもいいよ」

 すぐには事情を呑み込めずに拓馬を見る。

「嫌なら別に」

「行く」

 自分でも驚くほど大きな声でそう口にする。

 拓馬は意外そうな顔をしながらも笑っていた。

「そんなに行きたいとは思わなかった。完全に子供向けの遊園地かと思っていたけど」

 遊園地に行きたいというわけではなく、拓馬と一緒に出掛けたかったのだ。彼が帰ってきてから二人で遊びに出掛けたことはまだなかった。

「いいじゃない。でも、大学生くらいでも行くと思うよ。小学生のときにそれくらいの人を見たもの」

「そんなものだっけ?」

「遊園地なんてどこでも大差はないからね。近いし、便利だもん」

「なら行こうか」

 そのとき、拓馬の携帯が鳴る。一瞬発信者の名前が見え、ドキッとした。そこには千江美と表示されていた。彼は「千江美から」と一言断ると電話をとる。

彼は彼女と言葉を交わし、一瞬顔をひきつらせた。そしてわかったというと電話を切った。
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