わたしは年下の幼馴染に振り回されています
「用事があるから今すぐ来いってさ」

「いいよ。教室には適当に戻るから気にしないで」

 彼は残った昼ご飯を食べ終わると、テストなどを鞄の中に入れる。

「悪いな。どうせたいした用事でもなんだろうけど」

 わたしが首を横に振ると、彼は校舎のほうに戻っていく。

 何度かこういうことがある。彼女は拓馬をいつでも独占していたんだろうか。彼女の行動の節々にそう感じさせるところはあった。

 拓馬が最大限に彼女に親切にしてもそこまで求めるのは拓馬の与えるものと、彼女が求めるものが剥離しているからかもしれない。

 何気なくふっと天を仰いだとき、思わず体の動きを止める。

 二階の校舎から強気な笑みを浮かべている千江美と目があったのだ。

 彼女は卑屈な笑みを浮かべると、わたしから遠ざかっていく。

 彼女の姿が見えなくなりため息を吐くと、ごはんを食べることにした。わざわざ教室に戻って食べることも面倒に感じたからだ。

 最後のミニトマトを口の中に入れると弁当箱のふたをしめ、布の袋に入れた。
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