わたしは年下の幼馴染に振り回されています
 鞄の中に入れると、一息つき立ち上がる。


 教室に戻ろうと渡り廊下に入った時、足音が聞こえ振り返る。

 わたしは思わず声を出す。

 顔をひきつらせた千江美が立っていたのだ。彼女の脇には拓馬はいなかった。

「拓馬と一緒じゃなかったの?」

 思わず問いかけた言葉に、彼女はわたしを睨む。

「何であんたなんかにわたしの行動を決められないといけないの。鬱陶しい」

「気に障ったならごめん」

 反射的に歩みかけたわたしの手を彼女は打ち払う。

「あなたのことなんて嫌いなんです。近寄らないで」

 彼女は拳を握り、わたしにそう主張する。

 わたしはとっさに彼女の目を見ていた。だが、見た瞬間、胸が予想外の鼓動を刻む。

 一見さっきのような強気の笑みを浮かべていたように見える。だが、近くで見て彼女の眼は光で満ちていた。まるで泣いているようだったのだ。
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