わたしは年下の幼馴染に振り回されています
「可愛いって、こんなの誰でも似合うじゃない。変なことを言わないで」

「変なことじゃないって。本心を語っただけだよ」

「いちゃつくなら部屋でやってください」

 わたしの背後から話初めは聞こえた声が、いつの間にかわたしの隣で聞こえる。

 髪の毛を後方で一つに結った奈月があくびをかみ殺しながら入ってきたのだ。

「今のどこを見たらそう見えるの?」

 声が上ずるのを感じながらも、できるだけ平静を装っていた。

 だが、奈月は淡々とした表情一つ変えない。

「目の前の状況」

「どう考えてもいちゃついてない」

「まあ、いいけどさ。そのまま延々と可愛い可愛くないを言い続けるの? 時間の無駄だよね」

 彼女の言うことはもっともだとは思う。

「今から出かけてくる。お母さんたちによろしくね」

 冷めた反応を示す奈月に見送られ、家を出た。
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