わたしは年下の幼馴染に振り回されています
 同じテンポでそう答える彼に苦言を呈した。
 そのとき、店員の一人がわたし達のところまでやってくる。

「美月が着たらなんでも似合うよ」
「拓馬」

 そうあっさりと言い放つ彼をいさめるが、店員の女性はそんなわたしたちの話を聞いて笑っていた。彼はそんなことを聞かれても表情一つ変えない。

「一番似合うのはどれだと思う?」

 拓馬が選んだのは最初に手にした白いワンピースだった。そんな可愛い洋服が少しわたしに似合うか不安だったが、彼は絶対に似合うと言い張る。

 試着室で念のために袖を通した。似合っているのかはよく分からない。

拓馬に聞いてみようかとも思ったが、また可愛いを連呼されるのが恥ずかしくそのまま服を脱いだ。

 カーテンを開け、外に出る。

「もう着替えたんだ。見たかった」

 先ほどの女性の店員は他の客に案内をしていた。

「今度会うときに着てきてあげる」

 拓馬は少しだけ目を見張るが、すぐに笑顔になった。

「楽しみにしている」

 わたしたちはレジに行き、会計を済ませお店を出る。

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