わたしは年下の幼馴染に振り回されています
 気を引き締めても、今日一日の記憶がよみがえり、体をしんなりとさせる。

 家に帰ってから、奈月に詳しい話を聞いてみよう。

 そう思い、昇降口の外に出たとき、背後からわたしの名前を呼ぶ声がした。

「坂木さん」

 何気なく振り向くが、そこにたっていた人の姿を見て、思わず目を見開いていた。

意味もなく、頭を軽く下げる。階段でわたしをひっぱりあげてくれた人だったのだ。

 彼はわたしと目が合ったことに気づいたのか、目を細めると肩をすくめる。

この学校に中学生のころから通っていることもあり、顔見知りは多い。


だが、彼のことは知らなかった。だからその気持ちを言葉に乗せた。

「わたしの名前、どうして知っているんですか?」

 風がゆっくりと流れ、さらっとした彼の髪の毛を撫でていく。

彼はそんな迷い風にかき消されそうなほど小さな声で「ああ」と呻いていた。

「ずっと可愛い人がいるなって思っていて、それで」

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