わたしは年下の幼馴染に振り回されています
「知らない。連絡もない。…分かった」

 彼女は携帯を着るとじっと液晶画面を見つめている。

「どうかしたの?」

 彼女はわたしと目を合わせると、ためらいがちに目を逸らした。

「千江美が家に帰っていないんだって」

「今日はお母さんと一緒に出かけていると聞いたよ」

「その帰りに用事があるからと言い出して、別れたらしいの。それが四時半くらい」

 思わず時計を確認すると時刻は八時を指していた。

「探しに行かなきゃ」

「行かなくていいよ」

「どうして」

「きっと千江美はお姉ちゃんが苦手だから、拓馬に任せたほうがいいと思うの」

 彼女なりにわたしをきづかってくれたのだろう。

 そのとき激しい雨音が窓を叩く。雨が降り出したのだ。

 奈月は窓の外をじっと見つめた。彼女の携帯を握る力が強くなっているような気がした。
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