わたしは年下の幼馴染に振り回されています
「奈月はあの子と仲がいいの?」

「そこまでは。拓馬のことで何度か話をしたことあるくらい」

「やっぱり探しに行こうか。見つけたら即効拓馬に連絡をしたらいいんだよね」

 彼女は戸惑いがちにわたしを見て、小さく頷いていた。

 わたしはそれから母親に簡単に事情を話し、家を出ることになった。


 雨の中、街灯の光が雨粒を頼りなく照らす。奈月が時折拓馬に彼女が行きそうな場所を聞くが、拓馬は思い当たる場所はすべて探したらしい。

「どこに行ったんだろう」

 雨で濡れた前髪を拭い辺りを見渡す。

「どこかない?」

「分からない」

 彼女はしきりに瞬きをしている。

 一瞬嫌な予感が過ぎり、彼女の手をつかむ。彼女の手はいつもより多くの熱がこもっているような気がした。

「体調悪いの?」

 彼女の顔が明らかに引きつる。思い当たらないことがないわけじゃない。

 今朝、拓馬を置いて部屋に戻っていたこと。いつも以上に冷めた様子でわたしたちを見ていたこと。

 あれがその表れだったとしたら。

 わたしは彼女をつかむ手に力を込めた。
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