わたしは年下の幼馴染に振り回されています
「家に帰ろう。それからわたしが探しに行くから」

「大丈夫だよ。熱もそんなに高くないもの」

 拓馬と一緒にいることに浮かれて妹にも全く気を配れなかったことを恥じていた。

「わたしが心配なの。大丈夫だから」

 だが、彼女はかたくなに頷こうとしない。彼女が濡れないようにコンビニの軒下まで連れて行き、持っていたタオルで髪の毛や顔を拭った。

「ごめんね」

「気にしなくていいよ。わたしも気づかなくてごめんね」

 奈月の目が潤み、力なく頷いた。ふたたび顔をあげた奈月の目が見開かれ、わたしの背後の何かを見つめていた。

「いた」

 反射的に振り返り、暗闇で動く少女の姿を見つける。

「拓馬に電話をしてくれる? ここまで連れてくるから」

「でも、お姉ちゃんが嫌な思いをするかも」

「大丈夫だよ」

 奈月が雨に晒される以上に嫌なことなんてあるわけがない。

わたしは妹にそう告げると、彼女の傍まで行く。彼女が立っていたのは着物を売っているお店の前だった。
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