わたしは年下の幼馴染に振り回されています
もう店内の明かりは落ち、展覧用のものだけが飾られている。

彼女の髪も洋服もぐっしょりと濡れ、細い体にはりついている。

 彼女はそれを食い入るように見つめていたのだ。

「千江美さん」

 彼女の体が小さく震え、肌にはりついた髪の毛から彼女の澱んだ目が覗く。

「離して」

 彼女はわたしの手を振り払う。

「帰ろう。拓馬が心配しているよ」

 わたしにとって精一杯の彼女を気遣った言葉だった。

彼女が一番心配をしてほしいのは彼ではないかと思ったからだ。それは現実と相違ないことも分かっていたのだ。

 だが、彼女はわたしを睨む。

「あなたから拓馬の名前を聞きたくなんかない」

「でも、今日だってあなたのために」

「なんでこんな女のことが好きなのよ。鈍くて、いつも幸せですって顔をして、わたしのほしかったものを奪っていくの。わたしがほしいものを持っているくせに強欲で、最悪な女」

 わたしを傷つけるための言葉のはずなのに、その言葉がわたしに向いているとは思えなかった。

それはあの昼休みに見た彼女と重なり合う。
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