わたしは年下の幼馴染に振り回されています
 抱え続けるのは限界に達していて、敵意をぶつける相手をどこかで探していたのかもしれない。

そして、そんな自分を嫌悪しているように思えてならなかった。


 わたしはそんな彼女を諌めるどころか、手が雨粒に浸されながらも次の言葉を口にすることさえできないでいた。

「哀れな子に同情して楽しい? どうせ拓馬からわたしの家のことも聞いたんでしょう?」

「わたしは」

「もう放っておいてよ。あなたを見るたびに自分がみじめになっていく。そんな気持ちあなたに分かる?」

「お姉ちゃん」

 奈月の声に反応すると、そこには拓馬が一緒にいた。拓馬は奈月に傘を預けて彼女の傍に歩み寄る。

「千江美」

 彼女は目をつぶり、肩をすぼめた。

 奈月はそんな千江美を見たのか、すぐに拓馬に駆け寄ってきた。

「こんな場所で言い争ったら目立つよ」

 奈月の言葉に拓馬は言葉を飲み込む。

「家に来る? このままだとまた千江美が家を飛び出そうとするか、部屋に閉じこもってしまいそうだもん」

 彼女なりの判断だったのだろう。わたしも拓馬も奈月の提案に異論を唱えずにいた。
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