わたしは年下の幼馴染に振り回されています
 香ばしいお茶の香りが鼻先をつく。千江美はそのお茶の風下で、膝の上に拳をつくり、うつむいていた。

 母親の手がカップから離れる。

「とりあえずゆっくりしていってね」

 千江美は彼女の言葉に千江美は小さく頷いた。

 だが、顔を上げずわたしや拓馬と目を合わせようともしない。

「万理は今から来るらしいわ」

 その言葉を待っていたようにチャイムが鳴る。

母親がインターフォンで応答した後、玄関まで彼女を迎えに行く。

母親と一緒に室内に入ってきた万理さんは千江美のところまで行くと、彼女の腕をつかんだ。

「どこにいっていたの?」

「どこでもいいじゃない」

 何か言いかけた言葉をおばさんはのみこんだ。

「帰りましょう。話は家で聞くわ」

 千江美は手を伸ばさなかった。
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