わたしは年下の幼馴染に振り回されています
「誰がそんな嘘を流したのよ」

 あの一年生というのは誰のことかすぐに分かる。

彼の顔と名前も知らないが、噂にはなっていたのだ。

今年の一年にすごくかっこいい人が外部から入ってきた、と。

おそらく彼のことなのだろう。

外部からというのはわたしが通っているのは中高一貫の私立学校だからだ。


高校から入ってくる人はわずかながらにいる。彼もそのうちの一人だったのだろう。

 佳代の話によると、彼見たさにたまにそのクラスに見物人が訪れるほどだったと聞く。

目を輝かせている彼女も当然のように彼を見ていて、彼女も彼のことを大絶賛していた。

だが、別にそう言われても私自身、そんなに彼に興味がなく、そんな彼女の話を話半分で聞いていたのだ。

 そんなそわそわとした季節が過ぎ去ろうとしていた四月の下旬に、とんでもない話が耳に届いていた。

「嘘じゃなくて、本当のことだよ。だって奈月ちゃんが言っていたらしいよ」

 奈月と聞き、私は眉をひそめた。奈月は私より四歳年下の妹。

だが、一見しただけでは、私たちが姉妹であることを気づく人もいない。

それは私達があまりに似ていないからだ。
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