わたしは年下の幼馴染に振り回されています
「ごめんなさい。あの、何組ですか?」

 わたしは知らなかったのを認め、彼に問いかけた。

「三年五組。名前は佐藤信一っていうんだけど」

 彼は困った表情を崩さずに、言葉をつむぐ。

 わたしたちの学年は六組まである。

理系クラスで三組で、体育でも、あまりかかわることのない五組の人は他のクラスに比べると面識がない。

きっとわたしの記憶漏れの部分に彼がいたのだろう。

「ごめんなさい」

 仕方ない面はあるといっても、もうしわけない気分になってきて、素直にわびる。

「人が多いから無理はないよね」
 彼は笑顔を浮かべている。

 よく笑う、優しそうな人だ。

こんな人が同じ学年にいて、うわさにもならなかったのは不思議な気がするが、わたしがその彼に関する話題に気づかなかっただけかもしれない。


 でも、そのとき思い出したのは彼の上履きのラインだった。

あの色は三年生の青のラインではない。

あれは一年生のものだ、と思ったとき、想像以上の言葉が耳に届いた。
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