わたしは年下の幼馴染に振り回されています
 奈月の視線がこちらに向く。彼女は拓馬の肩を軽く叩いた。

 拓馬は反射的にわたしを見ると、屈託のない笑顔で微笑んだ。

「やっぱり良く似合う」

「だから、そういう事は」

「わたしもそう思いますよ」

 突然割り込んできたセリフに戸惑いながら声の主を見つめた。千江美だ。

 拓馬はそんな千江美を驚くことなく笑顔で見つめている。

「行くでしょう? 花火」

 まるでわたしの心を読んだような奈月の問いかけにわたしは小さくうなずいた。

「一緒に行こうか。一時間くらいならいいよ」

 勉強をしていると言っても朝から晩まで勉強をしているわけではない。

息抜き替わりと考えれば悪くはないだろう。

 夕方を待ってわたしたちは家を出る事にした。

奈月と拓馬は他愛ない話で盛り上がり、わたしと千江美が並んで歩く。

奈月たちとの距離が大きく開いていた。

その距離を縮めようと千江美に言おうとしたとき、千江美がわたしの腕をつかんだ。
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