わたしは年下の幼馴染に振り回されています
「奈月ちゃんに頼んだの。先輩と二人で話をさせてほしいと」

 彼女は目を細め、小さくお辞儀した。

「もう気を遣わなくても大丈夫ですよ。わたしはもう拓馬のことを忘れると決めたんです」

 そう笑った彼女はどこか大人びて見えた。

「今年いっぱいはここにいると思うけど、来年は多分おばさんの住んでいるところに引っ越そうと思っています。なので拓馬のことをよろしくお願いします」

 彼女の決意を聞き驚いていた。だが、それが彼女の下した結論なのだろう。

「分かった」

「そろそろ会場なので合流しましょうか」

 千江美の言葉に同意し、歩きかけたとき、誰かとぶつかった。

 ハスキーな声が謝りかけて途絶えた。

「坂木先輩とこんなところで会うなんてね」


 あからさまに嫌そうな顔をした艶やかな大振りの花がプリントされた浴衣を着た少女たちをどこで見たのか思い出した。

以前、拓馬がわたしを好きになったら飽きるのではないかと言っていた人たちだ。

もっとも二人はわたしが聞いたことを知っているかは定かではない。
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