わたしは年下の幼馴染に振り回されています
「美月さん?」

 千江美が不思議そうに振り返る。

「先に行っていいよ」

 わたしはそう答えた。彼女たちの悪意に千江美を巻き込みたくなかったのだ。

「あの子って拓馬君の従兄弟?」

 一人がそう顔を曇らせる。

 彼女はわたしを見て嘲笑った。

「どうやって丸め込んだのかは分からないけど、拓馬君、この前綺麗な女の子と一緒にいたんだよ。きっと本命なんだろうね」

「本田さん?」

 わたしは思わず翔子の名前を口にした。

「さすがに彼女ほどじゃないけど、誰かさんよりはずっと美人だよ。じゃあ、せいぜい楽しんでね」

 挑発的な瞳にわたしはびくりと震わせた。

 拓馬に友人は多い。わたしの知らない人もきっといるはずだ。

 だが、わたしの知らない誰かの存在に戸惑い怯えていた。

 だって、彼はあのときわたしにキスをしなかったから。

 嫌がっていたはずなのに、いつもと違う行動はわたしを不安にさせた。

 きっとわたしの中で拓馬に対して幼馴染以上の感情が芽生えていたから。

「美月?」
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