わたしは年下の幼馴染に振り回されています
 腕を掴まれ顔をあげると、拓馬が立っていた。もうあの二人はどこにもいない。

「千江美から美月が知り合いに会ったと聞いて、心配になって見に来たんだ」

「そう。奈月たちのところに行こうか」

 そう言ったわたしの手を拓馬が掴んだ。

「奈月と千江美が二人で見て来いってさ」

「でも、二人にするのは」

「美月がそう言うと思って松方先輩もよんでいたみたいだよ。だからね」

 わたしは頷いた。

 二人が言っていたことは確かに気になる。

それでも、わたしは今手をつないでくれている彼が今まで言ってくれた言葉をただ信じたかった。

 そのとき、軽い音が上空ではじけ、追うように少し重みのある音が響いた。

 空が艶やかに染まった。

 わたしも拓馬の手を握り返していた。
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