わたしは年下の幼馴染に振り回されています
 何を言うかも決めていないのに、言葉を搾り出そうとしたとき、わたしのそんな勇気を一気に吹き飛ばす、淡々とした声が響いてきた。

「こんなところで何をやってるのよ」

 振り返ると、そこには長髪の少女が立っていた。

その姿を見て、先ほどの言葉が彼女から投げかけられたものであることに気づく。

 そのどこか冷めた印象を受ける、わたしと同じ背丈の少女はわたしと彼を見比べていた。

その少女の髪の毛は肩の辺りで綺麗に切りそろえられている。

紺のブレザーの制服上下。膝丈までのスカート。

一見するとわたしの制服と同じように見えるが、厳密には異なっている。

制服とはリボンの色が違う。

それはこの学校の中等部の制服だった。

「奈月。今日は遅いんだね」

 彼女はわたしを一瞥すると、佐藤さんを見ていた。

だが、彼女はにこりとも笑おうとしない。彼女のムダに整った顔立ちであまりに無表情だと人形を連想してしまう。

 そこまで愛想が悪いわけではないが、今のような無表情なときもある。
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