わたしは年下の幼馴染に振り回されています
「人と約束をしていたから」

 無表情を崩さずに淡々と語る。

「誰と?」

 奈月の視線は佐藤さんのところで止まったままになっていた。

 そんなことより見知らぬ男性のことが気になるのだろう。

 とりあえず彼に奈月のことを紹介すべきだろうか。

 わたしは苦笑いを浮かべている佐藤さんに話しかけた。

「彼女はわたしの妹なの」

 奈月は愛想笑いさえ浮かべない。

彼女は最低限の礼儀は忘れない子だった。

そんな彼女がまじまじと佐藤さんを見つめているとを注意することにした。

「挨拶くらいしないさい」

 彼女はちらっとわたしを見ると、ため息を吐く。

「珍しい組み合わせ。お姉ちゃんに黙っておいてくれって言うから黙ってたけど、仲直りしたんだ。別に喧嘩したってよりおねえちゃんが一方的に怒っていただけなんだろうけどね。それなら待ってなくてもよかったんだ。時間を無駄にした」


 彼女の会話のないようについていけずに、奈月を見る。

 今の彼女の会話から察すると、奈月と彼が知り合いだというだけではなく、わたしと彼も知り合いということになる。

 目の前の彼を見ると、わずかに笑みを浮かべていた。
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