わたしは年下の幼馴染に振り回されています
 慌てて妹を呼び止める。

 歩き出した彼女は肩越しに振り返る。そのとき、彼女の長い髪が風にそよぐ。彼女の口元がかすかに微笑む。


「でも、お姉ちゃんもまんざらじゃなかったみたいだけどね。お似合いだと思うよ」

「奈月」

 わたしは大声で彼女の言葉をたしなめる。

 そして、唇を軽く噛むと拓馬を見た。

 わたしの脳裏の過ぎるのは少年だった頃の彼の姿。

美少年という言葉がこれほど合う人はいないというくらいかわいい子だった。確かに言われたら分かる。

拓馬だということは。でも、逆を正せば、言われないと分からないほど彼はかわっていた。

変わっていない部分をあえて探せば、名前と相変わらずその整った容姿に驚くくらいだ。

「お兄ちゃんは中身は相変わらず最悪だけど、見た目だけはかっこよくなったからね」

「中身が最悪って」

 奈月の言葉に苦笑いを浮かべている。

 わたしが分からなかった最大の理由はわたしの記憶との相違だ。

 茶色の髪の毛に、茶色の瞳が彼の記憶の一部にあった。
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