わたしは年下の幼馴染に振り回されています
「俺は奈月ちゃんがその一年野郎とつきあっていると聞いたけど」

 そう話に乗ってきたのは私の隣に座っている田中謙一。

彼は切れ長の目をひそめながら言葉をつづっていた。

その顔に笑顔はなく、野郎と言い放った彼にあまりいい感情を持っていないのだと一目で分かるほどだった。

「野郎って、失礼だよ。かっこいいじゃない。まさしく王子様って感じ」

 佳代は腰に手を当て、身を乗り出し、彼を睨んでいた。

 だが、田中くんもそんな佳代の態度にひるむことはない。

 彼はそっぽを向いてしまった。

「王子様って、ただの日本人じゃねえか。頭おかしいんじゃないの?」
「みんなそう言っているよ。奈月ちゃんを取られたから僻んでいるんでしょう。どうせあんたは相手にされないから大丈夫よ」」

 佳代は大げさに肩をすくめていた。

 私はそんな二人のやり取りをまだ眠気の残る目でじっと見ていた。

だが、二人のそんな無意味な言い争いは納まる様相を呈さない。

 二人は小学校からの幼馴染で仲がいい。

 幼馴染と言う言葉でわたしの中に嫌な記憶が過ぎるが、それをあっという間に振り払った。
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