わたしは年下の幼馴染に振り回されています
「いえ、その前に失礼しますよ」

「いいじゃない。久々なんだから。あの人も拓馬君に会いたがっていると思うから」

 母親の言うあの人とはわたしの父親のことだった。幼馴染の拓馬はわたしの両親のどちらとも面識がある。

「じゃあ言葉に甘えて」

 少し困ったような笑顔を浮かべているが、わたしの母親はもちろんそんなことを気にするそぶりもない。

「でも、本当に大きくなったわね」

 母親は拓馬を見て、目を細める。

 拓馬はそんな母親の言葉に目を細めていた。

「そうだよね。お姉ちゃんが見とれていた気持ちも分かるくらいだもん」

 奈月はそういうと、目を細めて微笑んでいた。

「奈月」

 彼女の言葉に顔が赤くなるのが分かった。その言葉を戒めるために強い口調で言い放つ。

「だって、今日、わたしが拓馬を迎えに行ったときには二人で見つめあっていていい雰囲気だったし」

 彼女は表情ひとつ変えずに涼しげな笑顔を浮かべている。

「そんなに誤解を招くような言い方はしないでください」

「誤解かな?」
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