わたしは年下の幼馴染に振り回されています
 わたしの言葉を聞いたからか、眉をひそめ、複雑そうな顔をしていた。

 やはり彼との会話は昔とはどこか違っていた。

昔のような彼はいないのだと思うと、少しほっとしたと同時になんだか寂しかった。

彼に気を許した瞬間だったのかもしれない。

「いつ、こっちに戻ってきたの? おばさんは?」

「親は向こうだよ。俺だけ戻ってきた」

「家は?」

 彼の家は引っ越す前は借家だったので、こっちに家は残っていない。

向こうで新しい家を建てたと母親から聞いた。

だから、拓馬の家族はここには戻ってこないものとばかり思っていたのだ。

「マンションで一人暮らし」

「四月から?」

 彼はうなずく。そのことを奈月とわたしの両親は知っていたことになる。

 わたしの両親は分かる。拓馬の両親と親しいからだ。

 だが、拓馬と奈月も今日初めて会ったというわけではないようだ。

 どうして奈月なんだろう。彼が一番親しい相手として彼女を選んだのだろうか。
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