わたしは年下の幼馴染に振り回されています
「音、切っておけばよかった」

 そう言うと、苦笑いを浮かべる。拓馬は電話をとろうとしなかった。

わたしの部屋にいるので、気を使っているのだろう。

「電話に出ていいよ。きっと用があるんだろうから」

「多分、そんなんじゃないと思うけどね」

 拓馬は苦笑いを浮かべていた。だが、一向に鳴り止むない気配の電話に折れたのか、携帯を取り出し、携帯を耳に当てる。

「どうかした?」

 拓馬は落ち着いた声で電話の向こうの相手に話しかける。

そのときの彼はやはり、昔の彼とはどこか違っていた。大人びていて、子供らしさはほとんどない。

 相手の声が大きかったのか、かすかに女の声が聞こえてきた気がした。

 拓馬を見ても、表情はいつもと変わらない。

 女の子の友達か、クラスメイトか。どちらかは分からない。

拓馬には拓馬の交友関係があるのだから、そんなことを気にする必要もない。

 拓馬は電話を切ると、携帯のボタンを操作していた。それをジャケットに無造作に放り込む。

 拓馬の友達が知っているのに、わたしの知らない番号。

せっかく携帯を出しても、わたしに番号を聞くこともしない。
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