わたしは年下の幼馴染に振り回されています
 教えてといえば教えてくれるかもしれない。だが、そのことを聞きだせずにいた。

「飲んだらリビングに戻ろうか。ケーキがあるらしいから」

「そうだね」

 わざと明るく伝える。暗い気持ちになっているのを悟られないためだった。

「元気ない?」

「そんなことないよ」

 彼とこれ以上はなすことに気がとがめ、オレンジジュースを口に含む。

ストローをすうと、果実特有のしつこくない甘みが口の中に広がってきた。あっという間にジュースを飲み終わる。

 拓馬を見ると、彼も飲んでしまっていた。

「行こうか」

 彼の顔を見ることができずに、透明なグラスを手に持ち、立ち上がった。そして、部屋を出て行く。

後ろに人の気配を感じることから、拓馬がついてきているは分かっていた。

だが、今の気持ちを悟られないために顔は合わせあいようにした。

 階段を半分ほど下ったとき、背後から声が飛んできた。
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