わたしは年下の幼馴染に振り回されています
 母親がわたしを見る。

「あとはチョコレートケーキと、ガトーショコラがあるけど」
「お母さんが先に決めていいよ」

 そう口にしたのはケーキならどれも食べたいのと、さっきの胸の高鳴りがわたしの心の大半を支配していて決められなかったからだ。

 そのとき、隣で椅子を引く音が響いた。

横を見ると、拓馬が立っていて、その引いた椅子に腰を落としていた。

「なんでここに来るのよ」

 拓馬から逃げるためにここに座ることにしたのに。

 そのとき、拓馬の目の前にガトーショコラが置かれた。

思わず目がケーキを追っていた。

「じゃあ、これね」

 そのときわたしの目の前に差し出されたのは上に筒状の固形のチョコレートが乗ったチョコレートケーキだった。

その脇には無数のチョコレートの欠片が散りばめられていた。

 母親は奈月と自分の物らしいケーキを持ち、ソファのところまで戻っていく。

 わたし一人だけ、別の場所で食べようとして子供じみたことをしたのかもしれない。

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