わたしは年下の幼馴染に振り回されています
 拓馬はさらっとした口ざわりのケーキにフォークを入れる。

欠片をフォークに刺すとわたしに差し出してきた。

「どうぞ」

「それは拓馬のじゃない」

「一口だけ」

 そのおいしそうに見えるケーキを食べたいという誘惑に負けてしまい、それを食べていた。

「おいしい?」

 拓馬の言葉に首を縦に振った。

「まだいる?」

「もういいよ。自分の分もあるし」

 食べたかったら自分で買えばいいし。

そう思って自分のケーキに目を向ける。そのとき、電気の光を受けて輝いてる銀のフォークを見つける。

その汚れのないフォークを見て、さっきは拓馬のフォークにそのままかぶりついてしまったことを思い出していた。

 わたしは自分のお皿に乗っているフォークを人差し指と親指でつまむと、拓馬に差し出そうとした。

 だが、わたしが代えると提案する前に、拓馬は残りのケーキを自分の口に運んでしまっていた。

 さっきわたしが食べたフォークで拓馬が食べているということは間接キス……。

さっき振りだけでもキスされそうになったことを思い出し、顔が赤くなるのが分かった。
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