わたしは年下の幼馴染に振り回されています
 拓馬はさっきと何ら代わりがない。

 普通好きな相手ならそれなりに意識してもおかしくはないと思うが、そんな素振りは皆無だった。

 彼の言う好きはどんな好きなんだろう。

動物とかが好きという好きと同じ意味でわたしのことが好きなのかもしれない。

 そのとき、拓馬の手が止まる。そして、わたしを見た。

「まだ食べたかった? もう少し早くいってくれればよかったのに」

「違う」

 結局言い出せないまま、わたしは自分のフォークを使うことにした。


 母親が夜ごはんの準備を追えた頃、父親が帰ってきた。

わたしは奈月と拓馬が言葉を交わすのを遠くから見ていた。

 わたしがいつもの席に座ろうとすると、奈月がリビングの隅に置いてある予備の椅子を持ってきていた。

折りたたみ式なので、すわり心地は普通の椅子に比べると若干悪い。

「わたしがそれに座るよ」

「いいよ。お姉ちゃんの席はあそこ」
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