わたしは年下の幼馴染に振り回されています
「拓馬君も自炊しているのよね。毎日大変じゃない?」

「簡単なものしか作れないですが。最近は慣れましたよ」

 拓馬は母親の言葉を笑顔で交わす。

「拓馬君は昔から器用だったからね。美月は本当に不器用だけど、拓馬君がいてくれるから安心ね」

 拓馬はそんな言葉にも笑顔を崩さなかった。

 わたしは母親の言ったように不器用なんだと思う。

料理ができないというわけではないが、何をするにも時間が異様にかかってしまうのだ。

大学になったら一人暮らしの可能性もあるだろうが、今の状態ではそれも遠い話になりそうだった。

 そのとき、母親は何かを思い出したように「あ」と口を開く。

「でも、美月と拓馬君は同じ校舎で授業を受けていたのよね? 今まで会わなかったの?」

 母親は不思議そうにわたしに問いかけてきた。

「学年が違ったらそんなものだと思うよ」
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