わたしは年下の幼馴染に振り回されています
 彼はわたしの動揺を見透かしたかのように、いたずらっぽく笑った。

「四年前の約束、覚えている?」

「約束?」

 わざとらしく問いかける。彼が口にした年月は先ほどわたしが思い描いた記憶と同じだったのだ。

 いつものように学校から帰宅し、宿題をしていると、部屋の扉が前触れもなく開いた。

そこにはわたしより少し小柄な男の子の姿があった。彼は目に大粒の涙をためていた。

そして、立ち上がったわたしに抱きついてきたのだ。

「美月ちゃん」

 わたしはわたしの体にしがみついている少年をそっと抱き寄せた。

「どうかしたの?」

「僕、引っ越すことになったんだ」

 わたしはその話を母親からすでに聞いていた。父親の仕事の関係で引越しをしないといけなくなったと。

引越し先は父親の地元だから、そこで家を買おうかという話も出ていて、おそらくここに戻ってくることはないだろう、という話だ。
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