わたしは年下の幼馴染に振り回されています
 わたしは言葉を飲み込む。

「でも、俺も気になるし」

「本当、忘れていいから」

 だが、拓馬が聞く耳を持っているようには思わなかった。

 拓馬はこの話を聞いたらどうするんだろう。喜ぶのだろうか。それとも戸惑うのだろうか。

わたしにはそんな己に対する問いかけの答えも見つけることができなくなっていた。



 学校への距離が狭まってくると、同じ制服をきた人がぐんと増える。

その中には拓馬のことを知っている人もいたのか、こちらをちらちらと見てくる人も少なくない。

中には昨日と同様の視線をぶつけてくる人もいて、複雑な気持ちになってきた。

「今日、やけに人の視線を感じるような気がするんだけど。何かおかしい?」

 拓馬は眉をひそめ、わたしに問いかけてきた。

鈍いのか、鈍くないのかさっぱり分からない。

噂がわたしと拓馬のことであれば彼自身も少しは知っていてもおかしくない。

だが、全く気付いていないということはやはり鈍いのだろう。

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