わたしは年下の幼馴染に振り回されています
 靴を手早く履き替えると、わたしのクラスの靴箱まで丁寧にも迎えに来た拓馬と合流した。

わたしは極力周りの人と目を合わせないようにしながら、拓馬の教室のある三階にたどり着いた。

「荷物を持ってくれてありがとう」

 彼は皮製の鞄を差し出す。だが、その隣のお弁当の入った袋は渡さない。

「今日、お昼、一緒に食べよう。この弁当は預かっておくから」

「一緒にって、嫌だって」

 そう強い口調で言うが、拓馬は手をわたしの頭に載せ、軽くはたく。

そのとき目の前の教室から出てきた見知らぬ女の子に睨まれた気がした。

 胃がきりきりと痛む。

「じゃあね」

 あくまでマイペースな彼はわたしに声をかけると、廊下を軽い足取りで歩いていった。

わたしは彼を追いかける元気もなく、自分の教室に行くことにした。

 だが、教室の扉を開けたわたしは自分の席に顔見知りが座っているのに気付いてしまった。

佳代だ。彼女はわたしと目が合うとにんまりと笑い、手招きした。


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