わたしは年下の幼馴染に振り回されています
 里実はわたしの言葉に苦笑いを浮かべていた。

「噂なんか気にしない。でも、拓馬君の話、聞かせてね」

 佳代はそう満足そうな笑みを浮かべた。

 佳代の興味はそっちに移っているのか、明るい言葉をかけてきた。

 先生が入ってきて、授業が始まる。黒板の文字を書き写していくが、その日の午前中は授業にあまり集中できなかった。




 いつもは長い四時間の授業があっという間に過ぎ去っていた。佳代がお弁当を持ってわたしたちのところまでやってくる。

「行ってらっしゃい」

 佳代はお弁当箱をわたしの机に置き、手を振る。

「一緒に食べようよ」

「拓馬君一人に女三人だと拓馬君が恐縮しちゃうでしょう」

「わたしは邪魔する気はないし、二人で行ってきなよ」

 と肩をすくめた里実と笑顔の佳代が交互に口にする。誰の同意も得られなかったわたしは一人で行くことになった。


 一つしたの一年生の教室はわたしが高一の頃に過ごしたフロアでもあった。

この学校では一年と三年の一部が同じ校舎を割り当てられている。

二年と同じ校舎であれば、拓馬と校舎の中まで一緒に行くということはなかったのかもしれない。
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