わたしは年下の幼馴染に振り回されています
 拓馬のいるフロアに足を踏み入れたとき、思わず足を止めていた。それは視界に映る少女の姿を確認したからだ。


まず目を惹いたのは明かりをうけ、やわらかくふんわりとしている艶のある髪の毛だった。だが、綺麗だと思ったのは髪の毛だけではない。

長い睫毛にぱっちりとした瞳。ふっくらとした赤い唇に、透るような肌。人形のように綺麗な子。そう即座に思うほど彼女の容姿は際立っていた。

彼女はわたしのそんな気持ちに気付く様子もなく、軽い足取りで階段を降りていく。

 あんな可愛い子が一年にいたんだ。今まで知らなかったということは拓馬と同じように外部から入ってきた子のかもしれない。

ああいう子を見ると、拓馬だって可愛いと思ってしまうだろう。わたしは首を横に振ると、拓馬の教室に行くことにした。

 拓馬の教室は一年三組。階段をおり、少し先に入り込んだ場所にある。教室の扉が開いていたので、外から拓馬を探すことにした。

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