わたしは年下の幼馴染に振り回されています
 教室をのぞいたとき、わたしの視線はある一箇所に向かう。そこには机に座り笑顔を浮かべている男の人の姿があった。

彼の周りには女性とが三人、男子生徒が一人いた。彼らと話をしているのは拓馬で、彼の表情はわたしに見せるものとはどこか違っていた。

「今度拓馬君の家に遊びに行きたいな」

 髪の毛を腰の辺りまで伸ばした女の子が体を乗り出してきた。


 拓馬はその子の態度にも表情を一つも崩さない。

「気が向いたらね」

「いつもそうじゃない。ね? いいでしょう?」

 だが、拓馬は「いい」とは言わない。笑うだけで、必要以上に何かを言うことはしなかった。

これがクラスの中にいる十五歳の拓馬だと気付いたとき、背後に人の気配を感じていた。

「どうかしましたか?」

 同時に聞こえてきた言葉に思わず振り向く。そこにはわたしより頭一つ分ほど背丈の高い男の人が立っていた。

彼はわたしと目が合うと、僅かに首をかしげ、目を細める。愛らしいという言葉がぴったりな少年だった。彼をそう見せているのは優しげな目元のせいだろう。
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