わたしは年下の幼馴染に振り回されています
 拓馬を呼んでほしいと言っていいのか迷っていると、彼は何かを思い出したように、目を見開く。

「もしかして美月さん?」

「そうですけど。どうしてわたしの名前」

「あいつから聞きました」

 彼の指差した先には拓馬の姿があった。

「何て言っていたんですか?」

 拓馬が他の人にわたしのことをどう言っているのか興味があった。だが、彼がその答えを伝える前に、影がわたしと彼の間に割って入ってきた。

「ごめん。気づかなくて」

 そこにはわたしの弁当を手にした拓馬の姿があった。

 彼は笑顔を浮かべ、拓馬の肩を軽く叩くと、教室の中に入っていく。そして、窓際から二列目の前から三番目の席に座っていた。彼の傍にはさっきまで拓馬と話をしていた男子生徒が寄って行く。

 だが、拓馬と話をしていた少女たちはそうはいかなかった。彼女たちはわたしを睨んでいたのだ。

「ごはんを食べるなら離れようか」

 わたしはその場から逃げるように廊下に出て行った。
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