わたしは年下の幼馴染に振り回されています
 わたしが泣いたのっていつなんだろう。

家族のことで涙をしたことはあまりない気がする。

ああいう家族で、わたしはいつも怒られないように卒なくやってきた。

だから、親に怒られたのは幼い頃、奈月と遊んでいて、家の窓ガラスを割ったときくらいだ。

そのときは年上だったわたしだけが怒られていた。

それは四歳も離れた姉なのでということで割り切っていたし、そんなものだと思う。

拓馬を好きな子に嫌がらせされたときも、唖然とし、落ち込みはしたが泣くことはなかった。

「見詰め合うのは悪くないんだけど、そろそろ行かないと遅刻するよ」

 拓馬のその言葉に我に帰る。

携帯の時間を確認すると、補習の十分前になっていた。

 拓馬はわたしの持っていた鞄をひょいと取り上げた。

「何か悩みがあるなら相談に乗るよ」

「何でもないの。鞄は返してくれないよね?」

「当り前」

 拓馬はにっと笑う。

 わたしは苦笑いを浮かべると、足早に学校への道を急ぐことにした。
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