Repair of the world~フルート吹きの魔法使い2~
ウェインは滝に向かって小石を投げた。
やるせない思いを抱えた小石は、力なく滝の中に吸い込まれていく。

「投げた小石のように、俺の力は弱い。俺の力ではこの世界を救う事が出来ない、それがとても心苦しくて歯がゆいんだ。もっと、もっと俺に力があったのなら、俺は人々を守れたかもしれないのに・・・!」

拳をグッときつく握りしめて、ウェインは苦しそうな表情を浮かべながら言った。
その表情が私の心を締め付けて、思わずウェインを抱きしめた。


「あまり思い詰めないで・・・!あなたも苦しかったのよね、それなのに私は自分の事ばかりで・・・」

抱き締めた事でウェインの表情は見えなかったが、多分驚いたのだろう、ウェインの身体が硬くなったのがわかった。

少しの沈黙をおいて、ウェインは口を開く。

「リオン・・・。いや、お前がこの世界に来て、俺はだいぶ救われている。今まで見えなかった希望がリオンのお陰で見えるようになったんだ。俺はお前がこの世界に来てくれて、感謝してる」

そう言うとウェインは私の身体をきつく抱きしめ、髪に顔を埋めた。
吐息が耳元にかかり、そこで初めて私が起こした行動の大事さに気付く。

< 92 / 206 >

この作品をシェア

pagetop