⁂初恋プリズナー⁂


「宮川香織とは政略結婚らしいし、他に本命がいてもおかしくないわよね?」

「あれだけイイ男だったら、女の方から言い寄ってくでしょ」

「最近なんか、酔った女をお持ち帰りしたって話もなかった?」

「あった!あんないい男だったら、お持ち帰られた~い!」


自分以外の女子4人の具体的に噂話に、心臓が抉られるな痛みが走る。


殆ど人付き合いをせずにきた自分には、そういった噂の類のもの全てが初めて耳にする事ばかりでショックを禁じ得なかった。

噂話に関心がなさそうな早苗さんですら、それらの話を知っているようで、自分の無知さに辟易するばかり。


「でも、宮川香織は篠田颯吾にかなりご執心らしいじゃない?」

「そりゃそうよ、将来篠田商事の社長夫人になれるのよ?顔も良い、お金もある、結婚するには好条件じゃない」

「実際、結婚も間近らしいよね」

「それ、先月の雑誌で篠田颯吾自身も言ってたよね?」


頭の中は既に真っ白になった。

颯ちゃんにとって、りこも遊びだったと思い知らされる。

恋人だと、少しでも想ってくれているのだと感じたのは、やっぱり私の過信だったのかな?

空になった牛乳のパックをプシュッと握り潰した。

颯ちゃんには、りこ以外の女性が居て、その女性達にも、りこのように『愛してる』て囁いていてたの?

颯ちゃんは時々、リリーにすら愛を語るような場面はあったし、手を繋いできたりとか普通にしてたし。

それが家族に対する愛情表現の1つだと思ってたけど、違った……?

普段リリーにしていた事を、他の女性にもしていたの?

田所さんと今井さんが話す噂話から察するに、噂の女性は1人じゃなさそうだし、あの美貌なら外に出たら言い寄る女性も数多だろう。

そこで手を握られたりでもしたら、勘違いどころか本気にする女性も居たに違いない。

寧ろ、一夜のロマンスですら乞う人も居たかもしれない。
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