⁂初恋プリズナー⁂
私は、これから新たに始まる学校生活。
保育園から小学生になるって、ちょっと大人になった気分で心を弾ませていた。
まして、颯ちゃんも通っていた『学校』という響きが、殊更私を高揚感で満たしていた。
それなのに、張り切って隣の席の男の子と向き合った時、男の子は私の顔を見て早々「ブスっ!」と吐き捨ててきたのだ。
慌てる先生。
固まる私。
普段、颯ちゃんに「お姫様」て言われてるから、自分をお姫様だと思った事はあっても、ブスだと思った事も勿論なかった。
初めての学校生活、黒歴史の幕開けの瞬間だと、この時はまだ気づいていなかった。
それ以来、朝の挨拶なんかまともに交わさなかったし、ずっと「ブス」と暴言を吐かれる日々が続いた。
最初のうちは相手にしていなかったけど、それが毎日となると、流石に落ち込む日に日に増していった。
そんな私を慰めてくれたのは、勿論私の王子様。
颯ちゃんの膝に顔を埋めて、涙で大きなシミをつくって泣く私の頭を優しく撫でたり、抱きしめて背中をトントン叩いて慰めてくれるのだ。
泣き腫らした瞼や頬や額にキスをして「大丈夫」と繰り返す。
王子様のキスには魔法の効果があって、どんなに辛い事でも元気にしてくれる。
颯ちゃんの魔法で、なんとか立ち直って翌日登校するんだけど。
その男の子は、毎日飽きずに私をブスと連呼してくるの。
もう大嫌い!
着替え終わった颯ちゃんは、ベッドに腰掛けると私を膝の上に座らせる。
此処が私の定位置だ。
広い胸に背中をあずけ、その温もりに身を委ねる。
どんなに嫌な事があっても、颯ちゃんの温もりに包まれていると安心できる。
守られてるって、実感する。
お父さんもお母さんも仕事で居ない事が多いけど、代わりに颯ちゃんが傍に居てくれるから、寂しいなんて思わなかった。
「きょう、あのおとこのこと、ふぃーりんぐがあわないことにきづいたの」