⁂初恋プリズナー⁂


「じゃあ、一応何かあった時のために連絡先を教えてほしいんだけど。りこさんの番号かラインのID教えて貰える?」

「えっ!?」


どちらを教えても、りこがリリーだってバレてしまう!

適当に理由をつけて断ろうか?

でも、スマホもスーツも返さなきゃいけないしぃぃぃ。

でも、リリーだって知られる訳にいかない。

でも、返さなきゃ~~~。

でもでもでもぉぉぉぉぉぉおっ!

パニックになりながら自問自答しつつ、「えっと、えっと」とどもっていると、


「あはは。また警戒してるの?」

「あの、あの、あの、私スマホ持ってないんです!」


和歌ちゃんが、番号を教えたくない時は「(持って)ない」と言うって言ってた事を思い出して、咄嗟の引用。

あれ?

でも、相手に明らかに拒絶の態度を示す時に使うっていってなかったっけ?

言った後に、ますます青褪める私。

散々お世話になっといて拒絶はないよね~~~。


「ああああああの、ごごごごご、ごめんなさい!そ、そういう意味じゃなくて」

「くくくくっ。そうか、持ってないなら仕方ないね」


私の非礼を責める事なく、向こう側で笑い声がする。


「ごめんごめん。そっか、そっか、持ってないか。くくくっ」

「はい……。あの、その、すみません………」

「いいよ。じゃあ、連絡は俺のそのスマホでしようか」

「はい、解りました……」

「一応、仕事終わったらこの番号に電話くれる?」

「はい」

「この携帯仕事用の携帯だから、時間気にせず電話していいから」

「はい」

「もし、途中で都合悪くなっても電話して」

「はい」

「スマホの中見てもいいから」

「はい、解り……え?……えぇっ!?」

「あはははは!」

「颯……!し、篠田さん!」

「ごめんごめん。りこさん面白いな~。じゃあ、明後日。今日はゆっくり休んで」

「………はい、ありがとうござます」

「おやすみ」

「おやすみ……なさい」


電話を切ると、小さく嘆息をした。
< 71 / 261 >

この作品をシェア

pagetop