⁂初恋プリズナー⁂
デート
とうとうりことして颯ちゃんに会う日を迎えてしまった。
待ち合わせは、パーティ帰りに送ってもらった地元の駅前。
駅の外に出ると、丁度颯ちゃんの黒いSUVの車が路肩に停車したところだった。
キスした事が頭を過り、少し躊躇ってしまう。
あれは、どういう意味があったんだろう……。
いくら考えても謎は全く解けず、私の心をかき乱す。
それなのに、私の手元に颯ちゃんのスーツはあるし、スマホもある。
これらを返さないわけにはいかないし。
よし、と気合を入れてドキドキしながら駆け寄って、助手席側の窓から運転席側を覘くと、颯ちゃんと瞳があった。
柔らかい笑顔が返され、ますます鼓動が高鳴る。
指で「乗って」とジェスチャーをされて、おどおど助手席側のドアを開けると、
「おかえり」
「えっと……ただいま?」
反射的に答えてみたけど、胸の中が擽ったい。
「丁度よかったみたいだね。とりあえず、乗って」
立ち話も何なのでってやつね。
素直に車内にお邪魔すると、今度はベルトを促される。
言われるがまま、乗りなれた助手席でシートベルトを締めると、車が発進した。
私の予定では、会って借りた物を返して『はい、終わり・解散!』のハズだったんだけど?
何故か、車は大通りに出て何処かへ向かうようだ。
こ、これは想定外……。
どうしたらいいのかとそわそわしていると、
「お腹空いてない?何か食べたいものある?」
「え?あ、えっと……いえ、特に……」
「じゃあ、俺のオススメのとこでいい?」
「あの……でも……」
「先に、何処か行きたい所でもあった?」
「いいえ……」
どうやら、ご飯を食べに行くらしい。
咄嗟に断る理由が見つからず、車は目的地に向かって走っている、らしい。
ただ物を返すだけでは味気ないから食事でも、てヤツかしら?
昨日は、帰宅してから夕食を作るには微妙な時間だったからファミレスで簡単に食事を済ませてしまったけど、普段は完全インドア派だ。
外食なんて、滅多にない。
何処に連れて行かれるんだろうっていうのもあるけど、いつリリーだとボロを出してしまわないかと、戦々恐々として落ち着かない。