⁂初恋プリズナー⁂
自分でフルメイクしたの初めてだし、化粧崩れしてない?
和歌ちゃんの服に似合ってる?
髪型大丈夫?
言葉使いもおかしくない?
不安で自問自答。
頂いた服は、白や赤の小花が散りばめられたネイビーのワンピースだった。
袖口にゴムが入ってフリル状になったパフスリーブで可愛い。
柄物なんて着ないけど、落ち着いたカラーで抵抗感はあまりなかった。
髪型も昨夜の白のバレッタ(和歌ちゃんに返し忘れたので使いまわさせて頂きました)でハーフアップにして、長い前髪は斜めに横に流した。
一応、この前と同じようにしてみたつもりだけど……大丈夫かな?
はぁ~。
それにしても……。
運転する颯ちゃんは、昨日キスした事なんか、なかったかのように平然としている。
もしかして、あれは夢だったのかな……。
私なんて、ずっと緊張しすぎて、心臓が飛び出そうなのに。
でも、不思議とさっきまで颯ちゃんに会うのが憂鬱だったのに、実際会ってしまうとときめいてる自分が居る。
車内は颯ちゃんの香水の匂いがして、鼻腔が擽られる。
今は、颯ちゃんと一緒に居られるって事が単純に嬉しい。
さし障りのない会話をしながら、暫く車を走らせると、24Hパーキングに駐車した。
車から降りると、然もないように自然と手を繋がれる。
「嫌?」
私の戸惑いを勘づいたらしく、問いかけられた。
嫌……じゃ、ない。
首を横に振ると、笑みを返された。
繋がれた手に導かれるように足を進める。
裏路地に入って、少しすると木製の壁のレトロな雰囲気のお店の前に辿り着いた。
重厚そうな木製のドアを開けてお店の中に入ると、20代後半くらいの色黒なワイルドな男性が迎えてくれた。
「おお、颯吾。いらっしゃい」
「あぁ、さっそく開店祝いに食べに来たよ」
「嬉しいね~。持つべきものは友だな」
2人は知り合いらしく、親し気に挨拶を交わしている。
私は、颯ちゃんの後ろに隠れるようにして、そっと店内を見渡してみた。
中も木製で統一されていて、北欧風であったかい雰囲気。
テーブル席が六つで、既に満席になっている。
「君が、りこ、ちゃん?」