⁂初恋プリズナー⁂
ズワイ蟹のトマトクリームパスタに、ガーリックバケットと季節の野菜サラダ。
こ、こんなにいっぱい……。
量的に食べれるか不安だけど、残すのは気が引けてしまうし。
何より美味しそうなので、頑張れるところまで頑張ろうと決意して箸を伸ばす。
いつもは、慣れない私に和歌ちゃんや颯ちゃんが取り分けてくれる料理も、今日ばかりは率先して取り分けなきゃ。
なんたって、今の私はリリーじゃなくてりこなんだから人に頼ってちゃダメ!
食材の種類をバランスよく、彩りよく。
確かこんな感じで盛ってたよね。
2人分を取り分けると、颯ちゃんを見る。
「「いただきます」」
発した言葉が重なり、息を飲んだ。
いつも颯ちゃんの呼吸に合わせて挨拶をしているので、癖でタイミングを計ってしまった。
颯ちゃんは気にしてない様子でサラダから頬張っている。
バレてない?
小さく息を吐いて私もお皿を取った。
食事をしながら、話題にするのは、パーティでの出来事。
颯ちゃんが、正也さんから連絡があり、ゆなちゃんのお母さんが、改めて私にお礼を言っていたと話してくれた。
それから、颯ちゃんの同級生の事。
ウサギの着ぐるみの正也さんと、ワイルド小林さんとは小学校からの腐れ縁で月1で会っているとか。
正也さんは高坂院長のご子息で、高坂病院の後継者。
小林さんは元々ホテルのシェフだったらしいけど、自分のお店を開くのが夢で、お金が貯まったのを機に1週間前にこのお店をオープンさせたのだそうだ。
チャラそうな2人なのに(ごめんなさい)、きちんと自分の将来設計をきっちりしてるんだな~。
颯ちゃんだって、ゆくゆくは篠田建設を継ぐだろう。
「皆さん、将来をきちんと考えらっしゃるんですね」
「りこさんは?何かしたい事とかないの?」
「……私は、特に……」
この歳で初めてメイクして、女の子らしいお洒落をした。
同世代の女子にしては、遅すぎる春。
そして、きっとこれが最初で最後……。
「パーティで思ったけど、りこさんは子供は好きでしょ?」