優しい呼吸

「こんにちは」

「こんにちは」

少女がにこりと笑って挨拶をした。こちらも同じように挨拶を返す、

「君はどうして歌っているの?」

ふふふ、と少女が笑った。

「鳥の代わりに歌えば、空へ届くのではないかと思って」

空に鳥はいない。ずっと昔に、空が汚れてしまった時に滅んだのだ。

人々は映像記録でしか鳥を知らない。

でも、鳥のように歌ったところで、それが何になるというのだろうか。

「空へ届いて、それから?」

問いかけに少女が不思議そうな顔をした。


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