夜は永遠に華を抱く
「おや、ウィルネ夫人。このような所で会うとは……、奇遇ですね」


ギュッと目を瞑って少し、耳にそんな声が届いた。
恐る恐る目を開けてみる。
するとさっきまで誰も居なかった場所、私達と少し間を開けた先に2人の男性が立っていた。

(綺麗……、)

ふとそう思ってしまった。
何故、彼等が其処に居るのか。
今、何が起こっているのか。
他に思うことはもっと有るはずなのに、彼等の現実離れしたその美しさに、目を奪われてしまう。

1人は月光に煌めく白銀の髪を腰まで垂らした中性的な容姿をした人。
もう1人は燃えるような赤い長髪を三つ編みにしていて、その雰囲気は猫を思わせる。
共通しているのは、どちらも燕尾服を着ている、という点だろうか。


「シュヴァイツ様にアルトウィーネ様、久方ぶりにございます。本日はどのようなご用件でございましょう?」

「ええ、ウィルネ夫人。此方の世界で暮らす貴女に頼みが有りましてね。それよりも、たまには帰ってきて下さいね、ウィルネ殿が寂しがっていました」

「それは……嬉しい限りですね」

「ねぇ、イイカゲン本題に入りなヨ、アルベルト。話が長いのはキミの悪い癖だ」

「おお、すみません、ロキ。ではウィルネ夫人本題に入ります。本日は他でもない、蕾の捜索にご協力頂きたい。最後の蕾がこの付近にいると判明しました」

「蕾……、もうそんな時期なのですね」

「ええ、他の4人の蕾は既にご到着されていますので、早急に」

「わかりました、見つけ次第ご報告致します」


………、話が分からない。
この人達は何を話しているのだろうか。
先生も、こんな人達と知り合いだなんて聞いたことないし。
ウィルネ夫人?先生は地位の高い方の奥様なのだろうか?
その前に、ウィルネって何?だれ?先生の事?

グルグルと疑問が湧き上がる。
でも、こんな状況で怖さを忘れて疑問を持てるだなんて。
私、かなり凄いと思う。
友佳と繋いだままの手からは、震えは治まっているものの、冷たさが伝わってくる。
まだ、怖いのだろう。
私は友佳の手をギュっと握った。
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