♥同居人は♥オカマです!


当然だ。格闘技も、女の子らしさも失った私は用済みだろう。




だけど私には思いの外耐えられなかった。




悲しいほどに私は周りに人がいることを当たり前と思っていた。




必ず帰るときには誰かがいて、休み時間もお昼のときも誰かがいることに。




苦痛で仕方がない。




話しかけてもにらまれるだけで、無視される。




日によってはいじめに近いものもあった。




ため口なんてものは、使うことができなかった。




臆病な私は、保険の効く敬語を使うことで、人間関係から逃げていた。




そんなものは、本当の親友か、友達か……家族に使うものだと、自分に言い聞かせて。




どんどん自分が惨めに思えてきて、どんどん自分と言う存在を遠く感じるようになった。




哀れに、惨めに、自分を客観的に見るようになってくる。




そんな人生に嫌気が差してきたとき、お父さんが転勤することになった。




私は、日本に残ることにした。




喘息の心配ももちろんあったけれど何より、東京に行って、新しくやり直そうと思った。




そこで二階堂さんがお母さんの知り合いと言うことで、私はシェアハウスチェリーにすむことになった。




誰かにとっては、つまらない当たり前の人生かもしれないし、もしかしたらいい方なのかもしれない。




でも、あの人を失ったことだけは、私の人生のなかで一番最悪の出来事だ。




会えるならもう一度……会いたい。

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